近年古文化財に対する一般の関心が急激にたかまり、これに応えて政府は去る昭和二十五年に文化財保護法を制定してその保存と活用を図り、国民の文化的向上と世界文化の進歩に貢献することを明かにした。わが京都における古文化財は、その大半が社寺に所在し、信仰の力によって生命を保って来たのである。明治以降社寺に対する保護が絶たれるに及んで、経済事情の変転から文化財の移動が多くなり、更に戦後の農地解放によって維持保存もあやぶまれるに至った。加えて修理の時機にあたっているものが多く、すでに廃滅一歩手前のものすらある。法による保護は行われているにしても、経費の全額補助ではないために、一部自己負担に苦しむ者は、不完全な応急的修理で間に合わせ、或はそのまゝ放置している現状である。特に寒心に堪えぬのは、指定以前の、言わば予備文化財の維持と環境保全に対して全然援助の手がのべられていないことである。一般の関心のたかまりと国の保護政策によって安定をとりもどしつゝあることは事実であるが、万全というには甚だ程遠い。
私ども古文化財の維持管理の責任にあたる者は、戦後いち早く京都古文化保存協会を結成し、相互の提携を密にして共通問題の処理にあたり、所有者を代表する幾多の事業を残して来たが、この間を通じて、経済的裏付けがないために会活動の限界につきあたっていることを痛感したのである。本会が真に所有者の意志を代表するためには、当面の問題の処理にとどまらず、物心両面にわたって補いあい助けあって、修理保存ないし管理の方途を講じ、もって安全に後代に伝える施策をもたねばならぬ。
このたび本会が財団法人設立を企てたのは、こうした過去の反省に基くものである。
即ち基本財産を設定し、その果実をもって保護事業を助成し、その他目的に添う事業に当ろうというものである
もとより理想実現には長時間を要するであろうが、今は取り敢えず寄付手続の容易な者によって法人の基礎的組織をつくり、順次全所有者の参加を勧誘し、更に広く本会の趣旨に賛同せられる方々の寄付を仰いで、基盤の拡充を図ってゆきたい。かくして本会、全所有者を代表する法人として、堅実な実践活動を通じて文化財保護の成果を挙げ、光栄ある伝持の責をはたし得ることを確信するものである。
(昭和40年財団法人京都古文化保存協会設立趣意書)
- 昭和23年12月16日
- 京都古文化保存協会が民間団体として結成される。これまでの京都府及び京都市における京都国宝保存協会・京都名苑協会は、公的機関が社寺協会に関係することを禁止され自然解消となる。
- 昭和40年3月19日
- 文化財保護事業を一層充実させるため、財団法人京都古文化保存協会設立。
- 平成23年9月1日
- 新公益法人制度改革に伴う公益財団法人として京都府知事の認定を受け、名称を「公益財団法人京都古文化保存協会」に変更。